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医療コラム

【 研修医・医学生に知って欲しい医療の進歩と話題 】

サプリメントは、アメリカに匹敵するように努力する必要がある

2009年11月30日

 

1.はじめに

 サプリメント(栄養補助食品、健康食品)を利用する人々や患者が増え、医療従事者の間にも関心が高まっている。これを表すものとして、2002年に東京医科大学が行った健康診断受診者1,530人を対象にした調査結果がある。それによると42.7%がサプリメントを利用し、12.7%はハーブ(薬用植物)類を用いていた。

別の調査でも、成人の48%がビタミンやミネラル等のサプリメントを利用していた。うち16~18%でハーブサプリメントを用いていた。そして、親世代の18%が「子供にサプリメントを与えている」と答えていた。

このようにサプリメントが普及しているにも関わらず、東京都福祉保険局が2005年に「医療関係者の『健康食品』への対応等に関わる調査」を行ったところ、アンケート結果より、医師の約8割、薬剤師の約6割が、健康食品に関する制度について「よく知らない」「名前は知っているが、内容については自信がない」等と答えていた(※1)。

 

 サプリメント使用で、最も進んでいるアメリカでは、国民の50%がサプリメントを摂取していると言われる。街にはいたる所にサプリメント専門店があり、日本とは比較にならない多くの種類が出回っている。

 

 アメリカでは、FDA(Food and Drug Administration:食品医薬品局)の厳しい管理下で市場に流通しているので、品質と管理において世界の最先端のシステムを持っている。

医師もサプリメントを頻繁に使うので、知識も深く、消費者の信頼も厚い(※2)。

その理由の一つに、アメリカでは医療保険制度が日本と異なっていることが挙げられる。病気になると日本と比べて高額な医療費が必要となる。そのため健康維持への関心が高くなって、薬よりも安いサプリメントに頼るのである(※3)。

 

 

2.日米でのサプリメントに対する依存の違い

 サプリメントも抱合する補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine:CAM)の種類を見ると、我が国とアメリカでは、かなり異なっている(※4)。

 

 アメリカでは、CAMに占めるランキングは、リラクゼーション:16.3%、ハーブ:12、1%、マッサージ:11.1%、カイロプラクティック:11.0%である。

我が国は、国民皆保険制度でありながら、薬によく似て、これに準じた効能を期待するサプリメントのみが42.0%と突出している。この理由は様々で、人の嗜好の違いもあって、一概には言えないが「薬好き」であることが要因ではなかろうか。

しかし、それでは済まされないサプリメントもある。

癌の患者がサプリメントを使用している例が急増しているのである。

 

 2001年に厚生労働省は「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班を結成した。その報告によると、癌の医療現場におけるCAMの利用頻度は癌患者の44.6%(1,382人/3,100人)が1種類以上利用していた。特徴として、サプリメントの利用頻度が際立って高く、96.2%にも達する。

内訳として、アガリクス:60.6%、プロポリス:28.8%、AHCC(Active Hexose Correlated Compound:活性化糖類関連化合物):7.4%と続いている(※5)。

 

 アメリカでは、サプリメントもFDAが審査する。

加えて、日本の薬事法にあたるDSHEA法(米・栄養補助食品教育法)も確立されており、食品と医薬品の中間に位置付けられている。メーカーは科学的データをFDAと消費者に開示しなければならない。

よってFDA承認された本物のみが、製品として認められる。

また、事故があった時には追跡できるトレーサビリティも徹底している(※6)。

つまり、科学的データを消費者に提示する前に、医薬品申請段階でさえ、厳しいFDA審査をパスしなければサプリメントとして上市できないという厳しさがある。

そして販売前には、GRAS(Generally Recognized As Safe)認証もある。これは、動物実験などによって、充分な毒性データがないことを確認しつつ、長年の食経験や科学的な知見などを総合して評価した上で、一般に安全と認められる食品素材または食品添加物に与えられる安全性の証明である(※5)。

 

 我が国のサプリメントは、食品衛生法により規制されているのみである。

医薬品ならば厳重な審査パスと、エビデンスが要求されるのであるから、サプリメントは、未承認医薬品と言える。

これらが、ムーディなキャッチコピーで、手の込んだコマーシャルとしてテレビで放送されている。堂々と、あたかも医薬品のような錯覚を与えるキャッチフレーズで巷間に流布している。

 

 アメリカと日本で、サプリメントに対する考えには、これだけの差異がある。

極論すれば、情緒的判断を加味した審査と、徹底した科学的判断による審査の違いである。これは「国民性による」と逃げるより「科学に対する考え方の相違」から来ると考えるべきであろう。

 

 

3.国民皆保険のある我が国でのサプリメントの使われ方

 我が国のCAM状況について、医療以外の治療、健康法を利用したという433人(回収率29%)のうち、335人から回答が得られた。結果、CAMは77.4%の利用率であった。

その中で、上位を占めたのは生物学的治療法(健康食品、栄養補助食品、保険機能食品など)で、黒酢、ビタミン剤、野菜ジュースなどであった(※7)。

 

 これらの利用が悪いのではないが、その内容は、これまで培ってきた医療の蓄積とは、多少離れているような気がする。

しかし、これらへの出費が、科学的に吟味したアメリカにおけるサプリメントの購入とはかなり異質であることは、判っていただけると思う。

 

 

4.我が国のこの方面での動き

 サプリメントも包含した、CAMについて、EBMによる立証が不十分(皆無)な我が国である。

一方で、大規模な国家予算を投入して臨床研究を進め、同時に、評価に相応しい研究方法論を開発すべく、模索を行っている欧米とを比べるには、CAMの普及状況に関する記述データさえ乏しく、ましてや科学的検証は遅れていると言わざるを得ない。

 

 そのような状況下、厚生労働省は統合医療のいくつかのテーマを取り上げ、安全性と有効性をEBMの手順に則って検証し、可能であれば今後のあり方について提言をすることになった。

医師の認知度、関心度、利用度についても調査を行っている。

 

 インターネットの調査によると、895人の医師が回答し、CAMの認知度は、漢方:87.6%、アロマテラピー:60.9%、ヨガ:31.2%であった。

医師が患者に対して利用している割合は、漢方:74.2%、コエンザイムQ10:57%であった。

患者が最も多く医師に相談するCAMは漢方:95.2%、AHCC:66.9%、鍼灸:52.1%であった。

 

 最も注目すべきは、この分野にもランダム化比較試験に用いて検討される事例が増えていることである。

また、サプリメントの有効性、安全性を薬用植物に関する臨床試験が急増している。

ただ、サプリメントは、医療用医薬品より有用性を示す科学的根拠においては十分でないことが多々ある(※8)。

 

 

5.話題の多いと思えるサプリメントに関する文献での紹介

5-1:コンドロイチン硫酸

 コンドロイチン硫酸は既に1955年に頭痛薬として市販されているが、変形関節症等に効果が期待され機能性食品として市販されている(※9)。

医薬品承認されておらず、運動器官の症状改善に対する機能性食品として、コンドロイチン硫酸は認知されている。

 

 この様に医薬品でありながら、サプリメントとして上市することには疑問が持たれるが、厚生労働省は医薬品的効能効果を目的としない限り食品として扱うことを認めている。

他、医薬品としても使われていたサプリメントとして、イコサペント酸、コエンザイムQ10など多くある(※10)。

 

5-2:カテキン

 カテキンにはエピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンー3-ガレート、エピカテキンの4種類がある。

抗酸化作用、抗癌作用などが報告されている。

通常のお茶から摂取する場合には問題は無いが、特定成分を抽出・濃縮したサプリメントでは、重篤な肝障害の危険性が有るので注意が必要である(※11)。

 

 

5-3:トリプトファン

 トリプトファンは脳内で生理作用を有するセロトニンを作るアミノ酸として、よく知られている。

トリプトファンを含む健康食品は不眠に悩む人々や、時差ぼけの防止を目的とする健康食品としてアメリカでよく利用されてきた。しかし、日本の企業が生産していたトリプトファンの飲用により、1500症例以上の好酸菌増加・筋肉痛症候群が発生し37名が死亡する事故が発生した。

この製品は遺伝子組み換え技術で細菌株を大量に培養し生産したものであった。後の調査で副生物の5-ヒドロキシトリプトファンの代謝障害が原因で、偏った採り過ぎで事故が起こることが判明した。

さらに、ベンゾジアゼピンなどとの併用で相加作用が起こる等、種々併合作用が発表された(※12)。

 

 これらに関しては、医薬品であれば、多方面の検討を上市の前に行う義務がある。よって、その時点で究明されているだろう。しかし、我が国での審査、ことサプリメントの審査は厳重ではないため、このような不慮の事故に繋がったのであろう。

 

 

6.おわりに

 今回の調査では、サプリメント毎の、或いは、個々のサプリメント比較は出来なかった。

 

 これらに代わりうる比較として、アメリカと、我が国のサプリメントの上市までの、FDA、及び、そこから派生した、DSHEA、GRASSの一端を紹介した。

 

 我が国でサプリメントは、健康食品の範疇に入り「健康の維持増進を目的として利用される食品」として法的適用を受ける。

しかし、アメリカでは、FDAの管轄に入り、医薬品並みの審査が必要となる。そして、無差別他施設比較試験を要請し、EBMをも立証させなければならない。

よって両国では、審査での厳しさ、経費の莫大さ等で、格差がある。

 

 我が国の製薬会社のベテラン開発スタッフでさえ、その論理構築、需要の必要性、実験上の緻密さが、追求されるだろう。

結局、FDAに対して、日本発サプリメントをアメリカに申請し、パスできるのは1~2製品程度であろう。

 

 今、我が国は高齢化社会で、健康保険への出費が莫大となっている。この高齢化が進めば、これを支払うことも不可能になることも考えておかねばならない。その時、自分の健康を自分で維持するためにサプリメント品質と効能とを科学的に向上させ、それを、摂取しなければならない時代が来るであろう。

 

 

引用文献

※1 サプリメントの意義と問題点 蒲原聖可 THE BONE Vol.20 No.4 2006‐7(475‐480)

 

※2 サプリメント辞典 アメリカのサプリメントとは サプリメントに関するコラムや関連サプリメント情報掲載 http://www.supple-navi.jp/supplement/2004/09/03091051.html

 

※3 サプリメント-Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88

 

※4 代替医療-Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E5%8C%BB%E7%99%82

 

※5 特集 補完代替医療のこれから サプリメント・健康食品をめぐる状況とEBM 鈴木信孝 病院 68巻11号 2009年11月(914‐918)

 

※6 アメリカのサプリとは 米国サプリ直販店 アーウェル 楽天店舗 http://www.rakuten.ne.jp/gold/vitaclub/supplement.html

 

※7 特集 補完代替医療のこれから 医療人類学から見た補完代替医療の世界 辻内琢也 中上綾子 谷口礼 病院 68巻11号 2009年11月(919‐923)

 

※8 特集 補完代替医療のこれから 補完代替医療の安全性と有効性 福井次矢 山下仁 蒲原聖可 川嶋朗 白川太郎 徳田安春 高橋理 小俣富美雄 大出幸子 竹谷内克彰 鶴岡浩樹 病院 68巻11号 2009年11月(898‐902)

 

※9 特集 広がりつつあるサプリメントを理解する ‐腎不全患者に活用するために コンドロイチン硫酸 野村義宏 臨床解析 Vol.24 No.13 2008(1799‐1802)

 

※10 話題のひろば サプリメントとエビデンス『クスリでもあるサプリメント』 篠塚和正 New Diet Therapy Vol.24 No.3 2008(75‐76)

 

※11 特集 広がりつつあるサプリメントを理解する ‐腎不全患者に活用するために カテキン 加藤明彦 Vol.24 No.13 2008(1753‐1755)

 

※12 第10回 知りたかった食品成分の機能とエビデンス トリプトファン 清水純 真野博 和田政裕 食生活 Vol.102 No.1 2008.1(36‐39)

 

※13 特集 広がりつつあるサプリメントを理解する ‐腎不全患者に活用するために ウコン 山口泰永 Vol.24 No.13 2008(1749‐1752)

 

※14 特集 広がりつつあるサプリメントを理解する ‐腎不全患者に活用するために プロポリス 武政睦子 Vol.24 No.13 2008(1787‐1789)

 

※15 特集 補完代替医療のこれから 事例 東北大学病院漢方内科から見えてくるもの 関隆志 病院 68巻11号 2009年11月(928‐931)

 

コラム著者: 鈴木 重量(すずき しげかず)
鈴木 重量(株式会社エーアイビジネス 代表取締役)

株式会社エーアイビジネス 代表取締役

 経歴:

・1957年:大阪市立都島工業高校工業化学科卒。
・1957年:武田薬品 中央研究所へ入社。
・1963年:農薬用殺菌剤セルタを開発、プロジェクトとして社長表彰を受ける。
・1970年:我が国最初のWORD MACHINEを用いたTEXT DATABASEの検索システム(Auto-Code)を開発。
・1973年:我が国で最初のExcerpta Medica(EMBASE)を導入。
・1979年:計量文献学を開発し日本科学技術情報センター(現在の科学技術振興機構 文献情報事業本部)より丹羽賞を受賞。
・1983年:合成セファロスポリン「パンスポリン他」の開発でプロジェクトとして社長表彰を受ける
・1985年:日本科学技術情報センター大阪支所より地域活動貢献により受賞。
・1987年:全社的文献情報検索システムを構築しプロジェクトとして社長賞を受ける。
・1989年:武田薬品を円満退社。

    同年:(株)エーアイビジネスを設立。

 (論文発表は多数有り省略)

 

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